IBMA極真会館増田道場における組手稽古について
拓心武道の組手稽古(修練)とは
拓心武道の組手稽古は、単なる勝ち負けを超えて「自他一体の技」の体得と「自己の技を活かす技能」の習得を目的としています。
この技能とは、基本技を運用し、相手の攻撃を弱体化、無力化しつつ、相手を制するよう技を駆使する能力を意味します。
それは単なる力のぶつけ合いではなく、「相手を制する方法の理解と意識によって導かれるものです。
拓心武道ではこの「制する方法」を抽出・体系化し、「心撃不敗の修練理論」として組手修練を構築しています。
組手稽古の実践:TS方式(ヒッティング方式)
現在、本道場では「TS組手方式(ヒッティング方式)」を中心に修練を行っています。これは、従来の極真空手の組手を見直し、顔面攻防を含む実践的で安全な組手方式として開発されました。
▶ 主な特徴
- 防具を着用し、安全性を確保した中で顔面突きを含む組手を実践
- 「攻防一体」の技術習得を重視
- 「拓心武道」の組手型(KumiteGata)を活用する稽古
TS方式は、子どもにとっても大人にとっても、心身を鍛えるのみならず、「感性向上」の効用があります。
TS組手修練の7つのテーマ
【理法の体得】
「機先を制する原則」を学ぶ
【組手型の応用】
基本型から発展した組手型の習得
心技体の統一
「制心」「制機」「制力」、「三つの制(Three Controls)」実践
運足法の習得と足腰の鍛錬
足使い・足さばきの修練と足腰の鍛錬
心眼の養成
「目付け」と「心法(Mental Controls Method)」の体得
心肺機能の強化
鍛錬稽古による身体づくり
胆力の育成
試合の稽古で胆力(Tanryoku〜courage)を養成する
機先(Kisen)を制する(Seize the opportunity) ─ 「三つの先(The Three Sens)」を意識する
拓心武道では、「機先(きせん)」を制すること、つまり相手より先に動くことで主導権を握ることを重要視します。
そのために修練では「三つの先(せん)」という戦術概念を深く学びます。
▶ 1. 先(Sen)〜仕掛けの先(Sen of Shikake)
相手の動きより一瞬早く仕掛ける
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相手が攻撃を始める直前や、攻撃の隙を与えない瞬間に、先んじて技を出す。
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主導権を握るための積極的な攻撃の先制。
▶ 2. 後の先(GonoSen)〜応じの先(Sen of Ouji)
相手の攻撃に応じて対応し、反撃する
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相手の動きを素早く読み、防御技と攻撃技を掛け合わせて「反撃技」を為すこと(防御×攻撃)。
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防御技で相手の力を無力化し、態勢が整っていない間に攻撃を加える。
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「見極め(見切り)」と「機の捉え方」を養う修練。
▶ 3. 先々の先(SenSen noSen)
相手の意図そのものを先読みして制する
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相手の心・気・動きをいち早く察知し、先回りして攻撃。
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試合・仕合・為合いの流れ(時間軸と空間軸)の中で“機”を読み取る。
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拓心武術ではこの「先々の先(為合いの先)」を、剣道とは異なる独自の概念として深めています。
稽古の重要点 ─ 「制心ー制機ー制力〜3つの制御」(SeiShinーSeiKiーSeiRyoku)〜Three Controls(MOF・Controls)
拓心武道における組手修練の本質は、単なる技術の習得にとどまりません。
それは、心・技・体を調和させ、自己を高めるための鍛錬であり、その核心に位置するのが、次の「三つの制(」です。
制心(SeiShin・せいしん)Mental Control
己の心を整え、心の状態を制御すること
混沌の中にあっても「心」を乱さず、状況を冷静に見つめ、決して慌てず、的確に動く。
制心(SeiShin)とは、恐れに囚われず、雑念に惑わされず、主体的な判断と行動ができる「心の状態」を維持する力を意味します。
制機(Sei-Ki・せいき)Opportunity Control
攻防における「機(機会)」を見極め、捉えること
「機(Ki)」とは、一瞬の隙、一拍の間、流れの転換点──すなわち「時と場」の機微を意味します。また「機(Ki)」とは、「気(Ki)」でもあり、意識です。すなわち、拓心武道では「気(Ki))」や「意識」の流れ、間を捉え、我が物とすることを目指します。「制機(Sei-Ki)」とは、物事の起こりには、「機(Ki)」があることを認識し、それを活かす洞察力と感性を研ぎ澄ますことを目指します。
制力(SeiRyoku・せいりょく)Force Control
「力」を制御し、自在に操ること
力をただ強く出すのではなく、必要なときに、必要なだけ、的確に作用させる。
制力とは、力を制御することで真の効果を生み出す術であり、武の理に通じる要です。
三つの「制( Sei〜Control)」──武の道を照らす灯火
この三つの「制」を体現することが、拓心武道における組手修練の最終的な目標です。
単なる勝敗や技術の巧拙を超えて、人間としての感性と判断、そして行動の質を高める修練こそが、私たちの歩むべき武の道なのです。
組手稽古を通じて得られるもの
- 感性の開発と理性の高次化によって、実践的な判断力の育成を目指す
- 心身の柔軟性を確保し、それを統一
- 既存の価値観による「勝負」ではなく、拓心武道哲学における、自身との「勝負」に勝つことを目指す。
拓心武道と組手修練の未来
IBMA極真会館増田道場は、極真空手の伝統を尊重しつつ、新たな時代にふさわしい組手修練のあり方を追求しています。
拓心武道メソッドに基づいたTS方式の組手修練は、老若男女すべての人にとって、自己の可能性を広げる道です。
「拓心」——それは、身体を拓き技を創る、心を拓き自分を活かす、その道を目指すこと
備考
- 2021/2/10:一部加筆修正
- 2021/8/25:一部加筆修正
- 2022/12/5 改訂
- 2025/6/25:再構成