拓心武術の3つの先と機先
機先を制する原則
拓心武術では自己存在には自他の関係性における空間的(距離的)かつ時間的な「間合い」と「気(機)の流れ(心・気・力の変化)」があると考える。そのことを前提として、拓心武術の修練では、自己と他の関係において自己を活かす理法の体得を目指す。
拓心武術の組手修練は「制心・制機・制力」、3つの戦いの原則の実践である。その3つの戦いの原則の一つ、「制機」を実践するために「機先を制する」ことを目標とする。その機先を制するためには「3つの先」を活かすことが必要である。
拓心武術の「3つの先」〜先(仕掛けの先)ー後の先(応じの先)ー先々の先(為合いの先)
「先」を活かす
- 「先」とは「先前の先」「仕掛けの先」ともいう。「先(仕掛けの先)」とは、相手が攻撃(仕掛け)をしようとする直前、あるいは相手に攻撃の間を与えないように「先」をとり、攻撃する事である。
「後の先」を活かす
- 「後の先」とは「応じの先」ともいう。拓心武術の修練では、相手が攻撃を仕掛けてくることをいち早く読み取り、相手の攻撃に対し「防御技×攻撃技(反撃技)」で対応する「応じ」の体得を目指す。この「応じの先(後の先)」とは、相手の攻撃を防御技によって弱体化、無力化し、かつ相手の心・気・力(態勢)が充実していない弱い所を反撃することである。
「先々の先」を活かす
- 「先々の先」とは「為合い(しあい)の先」ともいう。「先々の先」とは、相手の動きをいち早く読み取り、見抜き、察知し、「防御技×攻撃技で対応する(後の先)」よりも速く相手を攻撃することである。また、拓心武術では、相手との攻防(試合・仕合い・為合い)の流れ(時間軸×空間軸)の中で機を捉えて(機先を制し)攻撃することを「為合いの先」という。この部分が剣道の「先の概念」とは異なる部分である。拓心武術の修練では、「後の先「応じの先」」の体得を通じ、制心、制機、制力を目指す。
増田より
拓心武術における「機先を制する原則」とは、剣術の思想における〈機・先=先をとる〉という概念を参考にしてはいるが、全く同じ概念かどうかはわからない。あくまで拓心武術の概念は増田 章が様々な現象の本質を研究し考案したものである。また〈剣〉と〈拳〉の違い、修練方法の違い、目的の違いなどがあり、同一の概念かどうかはわからない(私は古武術を尊重するが絶対視はしていない)。
なお、拓心武術の修練法には、拳を用いるのみならず、小武器(小刀など)を使うものが含まれている。拓心武術の体系は、その修練を通じ、剣の先達が到達した境地同様、〈武の術〉を〈道の思想〉へ包括、融合していくことを到達点(ゴール)としている。なお、拓心武術の修練における「先々の先を活かす」とは、自己との対峙、かつ他者との対峙、そして自他との対話を徹底することが含意されている。また、「読み合い」を活かす組手修練により、自己を活かす武術を自他を活かす武道へ昇華するためだと言っても良い。また、それを実現するための種子のようなもの、また意識と言っても良い。是非、拓心武術の修練者はよくよくこの思想を心中においてほしい。
参考資料